教育再生会議の有識者による議論は中学生のホームルーム並み


ノーベル賞受賞者、野依座長の「塾禁止発言」で注目を浴びている教育再生会議。どうせ、マスコミが面白おかしく書いてるだけだろうって思っていました。

http://www.asahi.com/national/update/1223/TKY200612230248.html

でも、議事録見たら、ほんとに発言してたみたい。っていうか、この会議自体すごい。
議事録↓

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/2bunka/dai3/3gijiyoushi.pdf


話している内容は、中学生のホームルームでやっているような内容。さすが、「有識者」。メンバー見ても、有識者だらけ!専門家は一人もいないけどね!

●「教育再生会議有識者メンバー

浅利慶太劇団四季代表)
池田守男(資生堂相談役)=座長代理
海老名香葉子(エッセイスト)
小野元之(日本学術振興会理事長)
陰山英男立命館小副校長)
葛西敬之JR東海会長)
門川大作京都市教育長)
川勝平太国際日本文化研究センター教授)
小谷実可子日本オリンピック委員会理事)
小宮山宏(東大総長)
品川裕香(教育ジャーナリスト)
白石真澄東洋大教授)
張富士夫トヨタ自動車会長)
中嶋嶺雄国際教養大学長)
野依良治理化学研究所理事長)=座長
義家弘介横浜市教育委員)
渡辺美樹ワタミ社長)


高輪プリンスホテル「鈴蘭の間」で山谷総理補佐官を交えて行われた会議について茶々を入れていきます。

議事録の内容について


1.「物語の読書や風土・歴史・伝統などの学習の充実により徳目を身に付けさせる」
(川勝委員)


「ふるさと学」を学ぼうよだって。それはいいんだけど、結局なんでもナショナリズムに結び付けたいんだよね。こういう人って。

自国への誇りを持たない日本人は海外では誰にも尊敬されない。これは教員も同じ。子供の心に夢や希望を育むことは、そうした教員からは期待できない。

なぜ尊敬されないんだろう。そしてどうしてそんなに尊敬されたいんだろう。意味が分かりません。



2.「自然体験活動、ボランティア活動等を通じて規範意識を育てる」
(門川委員)

イベントではなく、日常化できるかが大事。朝、学校の周りを掃除するとか、トイレを掃除する等。

こういうのって、ずっと前からやってるでしょ?小学校のときも、中学校のときも、掃除とかやらされたよ。もっと大規模にしようっていうことかな?
ちなみに僕がいたイギリスの地方都市では、街の掃除は失業対策の一環として、自治体が職がない人に仕事として与えていました。イギリスはどこもそうだと思うけど、日本とは比べ物にならないくらい道が汚いので、公的機関による掃除が不可欠。それを仕事として与え、賃金を与えていることによって、暮らしていける人も存在する。なんでもボランティアまかせにしてしまうのも、どうなんだろうね。



3.「芸術・文化活動やスポーツ活動を通じて、子供の心を豊かにする」について
(小谷委員)

ハーモニーを通じて友達を作る
スポーツ − ノルディックウォーキングをしよう!
テレビで30人31脚を見て感動したんです。

だそうです。楽しそうでよかったですね。



4.「学校の規律を乱した子供に対してルールを守ることの大切さを教える」について
(義家委員)

ヤンキー先生に言わせると、「現在、対教師暴力は過去最高。教師が暴力にあうので、体罰をしたほうがいい」ってことらしいです。

そして、なぜか議会はこの問題について、熱く議論を交える。ま、内容はくだらないことばっかなんだけど。


内容とは別に品川委員の、これらの発言はどうなんだろ。

一方、出席停止を導入したアメリカでは犯罪が増えたというエビデンスがある。まず大事なのはクラスのマネジメントをどうするかを具体的に考えること。そして、科学的にエビデンスがある対立解決プログラム等を先生に教え予防的なプログラムの導入を図る。
アメリカのようにオルタナティブスクールがあればまだいいが、ない以上問題は何も解決されない。反社会的な行動へのリスクが高まるだけだ。
・・・
ゼロトレランスが一時的に効果があることは、エビデンスのあること
だからだ。
・・・
出席停止はラベリングになる。いじめる子といじめられる子が逆転する可能
性もある。
(品川委員)


ちゃんと日本語使えって!日本語になってないじゃん。カタカナ英語満載だな。長嶋茂雄か!「ゼロトレランスが一時的に効果があることは、エビデンスのあることだからだ。」これはすごいな。名言だ。日本語もまともに使えない人が有識者だからな。
でも、品川委員はこの会議の中では一番まともにしていました。自分でちゃんとフィールドワークして、現状を把握している(つもりだけどね!)ようでした。品川委員は、なにより塾で日本語を勉強した方がいいと感じました。



5.「家族の日」について
(葛西委員)

うわ、こんなの作ろうとしてたんだ。
山谷補佐官の発言

内閣府が家族の日の国民運動のために予算を計上している。都道府県の自治体が家族の日を別々に設定している。
(山谷総理大臣補佐官)

もう予算計上しちゃってるんだ。すごいですね。また、祭日が増えてうれしいです。祭日大国日本ですね。既に。



6.「食育について国民運動を展開する」について
(陰山委員)


食べるものくらい自分で決めさせてくださいよ。国民運動って政府から言われてするもんなんだっけ?



7.「ワーク・ライフ・バランスの取組を進める」について
(池田座長代理)

「会社人間から社会人間にチェンジしていく」そうです。意味不明だけど、がんばってください。



8.「有害情報から子供を守り、健やかな人格形成を図る」について
(事務局)


こういうのも止めて欲しいよね。健やかな人格形成を図るって自分たちがまず健やかな人格になってから語ってください。


そして例の発言がついに

(野依座長) 塾をやめさせて、放課後子供プランをやらせといけない。塾は出来ない子が行くためには必要だが、普通以上の子供は塾禁止にすべきだと思う。
(葛西委員) 今は中学の受験が主体となって、学校のシステムがおかしくなったので塾が生き残っている。しかし、順番が逆で、塾禁止の前に公教育の再生が先である。
(野依座長) 公教育を再生させる代わりに塾禁止とする。それくらいのメッセージを出していいのではないか。昔できていたことが何故今できないのか。我々は塾に行
かずにやってきた。大学も誰でも入れるようになっている。難しくない。塾の
商業政策に乗っているのではないか。
・・・
(野依座長) 私は文化力の低下だと思う。算数、数学だけやっていても力がつくものではない。だから放課後子供プランは是非ともやらなければならない。
・・・
(野依委員) 我々のころは、部活もやって、その後、休憩してご飯を食べて、勉強していた。塾も行っていない。
・・・
(小宮山委員) 確実にいえることは、抑える教育は駄目。伸びる子にはどんどん難しいことをやらせることが必要。


何でもいいけど、文化力ってなんだ。「算数、数学だけやっていても力がつくものではない。」たしかにその通りだ。えらい数学者様でも「国家の品格」くらいのレベルのものしか書けないしね。これは国家の品格批判か。さすがノーベル賞受賞学者はエッジが効いてるな。


この発言もすごかった。

(川勝委員)
テレビを禁止し、有害情報はシャットアウトし、土日も帰さない。大家族、擬似家族のようなものになっている。こういうことは私立でしかできない、ではなく公立でも真似るべきだ。ある特定の期間だけでもやると必ず、家族にフィードバックされる。日本は植民地に学校を作って、教育した。それをやると躾ができた。学校がもたらす家族へのフィードバックというものもある。学校コミュニティーを大家族のように使うこともいいのでは。
・・・
(野依座長) 先ほど陰山委員がテレビの弊害を言っておられたが、各家庭とも所有するテレビを限る、そして、チャンネルは親がコントロールするとすれば、有害番組は見なくなる。

えー、植民地に学校作って教育したことは素晴らしいから、同じようなことやれってこと?それって躾じゃなくて洗脳ですよね。さすが川勝委員。
そして座長のお言葉「チャンネルは親がコントロールするとすれば、有害番組は見なくなる。」名言ですね。


本当の有識者


こんな馬鹿げた会議を社会的ステータスの高い「有識者」が真面目にやってる姿は滑稽でしかない。役人が気を遣って、うまくまとめてあげたのに、「自分たちの意見が採用されていない。まるでヒトラー」ですからね。さすが有識者は言うことが一味違います。


この会議の一番の問題は専門家が一人もいないことだろう。なんで教育についての専門委員会なのに、教育学者が一人もいないわけ?それどころか、社会学者や心理学者などの隣接諸科学の委員も一人もいない。座長も化学者だし。
確かにメンバーの皆さんは各分野で優れた業績を残してきた人たちがほとんど*1。でも、その人たちは教育行政の専門家ではない。一生を賭けて教育について研究している学者は腐るほどいる。そういう人たちが、他の分野の専門家に劣っていると思うだろうか。
政府もマスコミも天才は何でもできるって思い込みすぎている帰来がある。ノーベル賞取った偉い学者様だから、教育についても素晴らしい洞察をしてくれるだろうって。そんなの無理に決まってる。天才にだって限界がある。各分野の専門家には絶対にかなわない。もっと専門家を尊敬して欲しい。
委員を専門家で固めろって言っているわけではない。むしろそうすべきではないと思う。野依さんを入れるのもいい。経営者の人も入れるのも新しい視点が加わることになり会議にとって有益だ。でも、専門外の人だけで構成される専門委員会ってなんだろうね。少なくとも、半数くらいは教育について専門的に研究している人(文科省官僚も含めて)が参加すべきだし、座長は専門家にすべきだ。教育学は社会学とか心理学とか、非常に広いので、教育学者だけでも様々な意見が集約できる。


この委員会の第2の問題は、目的意識が不明という点だ。何のために教育を再生させるのかという目的が欠如している。「美しい国」作りのため?そんな曖昧な目的は無意味だ。「日本経済復活のための人材育成のため」、とか、「科学立国日本復活」のためとか、そういう馬鹿げた目的でも具体的な目的をきちんと定めていた方がまだましだ。


もう一つの問題は、トレードオフの意識がないことだ。みんな、あれもやりたい、これもやりたい、って言っているだけだ。それをやるには、他のことを削らなくてはならないってことを完全に忘れてる。1日20時間くらい学校にいれば実現できるかもね。

*1:一部おかしなヤンキーもいますけど!